翌日、特に予定もなかった。暇を持て余すくらいだったら、と
教えてもらった先輩の家に向かう。
別に阿部に会いたいわけではない。そう心の中で繰り返していた。
そこには、同じバイトの仲間が集まっていると聞いた。
この前、朝までカラオケに行ったとかいうメンバーだろうか。
インターホンを押すと、すでにガヤガヤした声が、空気がはみ出てくる。
「おー!本当に来た。今あいつ風呂場。瀬奈はまだかってうるさいよ。」
先輩は喋りながらドアを開け、元々そこにいたであろう場所に戻り、
何やら騒がしいゲームをしていた。
部屋には、阿部の彼女もいた。
その横には、もう一人、女の子がいた。
先輩とゲームをしているのか、見ているだけなのか、
よくわからなかったが、高い笑い声が響いていた。
なんで私ここに呼ばれたんだよ。
まだほとんど話したことがない二人に、ぎこちなく会釈をする。
そう思ったのも束の間、風呂場から声が聞こえた。
「せなー、来たのー?遅いって、早くきてー!」
このあたりでまた思った。なんなんだよ。
彼女はここにいるのに、私を呼びつけて、
髪染めるから来てってどういうことだよ。
申し訳ないけど市販の髪染めなんて触ったこともないから、
何すればいいかもわからないよ。
それでも、来てしまったからには求められる役割を果たすべきなのか。
こういうところが真面目なのか、厄介なのか。
瀬奈は風呂場に近付き、ドア越しに聞いた。
「な、なに、来たけど、私わかんないよ、帰っていい?」
「遅いからさ、もう染めちゃっててさ、見てよその箱!
俺、金髪にするんだぜ!」
「・・・え?金髪じゃバイトできないじゃん、辞めるの?」
「いや、大丈夫っしょ!」
「金髪にしたことあるの?」
「いや、ないよ!でもさ、なんかおもしれーじゃん。
瀬奈も気に入ってくれると思って!」
確かに、手元のパッケージには金色の髪をした男性がニヤリと笑っていた。
私の人生に突然現れた、このよくわからない生き物とどう接したらいいのか、
ますますわからなくなっていた。