ねごと日記

ラジオときどきPodcast

よしなしごと -- 4

居酒屋のバイトは、ちょっとだけ楽しかった。

瀬奈は、お店に来る客にはあまり興味がなかったが、

働いている人たちをつぶさに観察した。

店長は、40歳くらい。下手したら30代かもしれない。

瀬奈に全然笑いかけず、仕事も大して教えてくれない。

瀬奈が任されたのは、会計と客の席案内。

レジは他のバイトでもやっていたし、別に教えてもらわなくてもよかった。

ただ、席案内に夢中になると、

客をパズルのように角から順々に案内してしまい、

お店は空いているのにぎゅうぎゅうに詰まった

悲しい席案内をしてしまうことがよくあった。

時々、「空いてるなら、あっちの席でもいいっすか?」と

カップルに言われたりして、ハッとした。

インカムで、案内した席を読み上げる。

「1番、3番、案内してます。」

すると、キッチンからイライラした店長のインカムが入る。

「教えた通りにやってよ、「番」はいらないんだよ、長い。」

どうやら、「1、3、案内」と言えばよかったらしい。

教えてもらったことなんてないけどね。

1年も働かないことがわかっているためか、店長のそんな言葉は

瀬奈のどこにも響かず、とにかくお金のため。

働いて、働いて、だんだん閉店までいることも増えてきた。

阿部はというと、キッチンとホールと、

その日によって忙しいところに入る、スーパーマンだった。

店長の冷たいインカムを聞きつけて、

「ちょっと〜、本当に瀬奈に教えたの?てんちょー!」

と、瀬奈が思った通りのことを言ってくるから、興味深い。

そういえば、あの日から見事な金髪になった阿部は、

薄汚いバンダナで立派な髪を隠しきれず、即店長に捕まっていた。

そりゃそうだろ。また面白いものを見せてもらった。

一応、金髪は禁止なので、即黒染めをするように言い渡されていた。

「わかったわかった、次のシフトまでにね〜。」

阿部はそう言っては金髪のまま出勤し、

ホールに出せないからとキッチンに追いやられていた。

キッチンやりたい人は金髪にすればいいのかもな、と

瀬奈は本当に他人事のように思った。

阿部も、「キッチンやりたいなら金髪にすればいいんだぜ!」と

大きな声で笑っていた。