小学生の頃、妹が小さな金魚を飼っていた。
どこかの祭りですくってきて、そのまま帰ってきたというよくある話。
水槽でヒラヒラ泳ぐ姿が可愛かったものの、
1年ほどかけて巨大化。
最初の姿を忘れてしまうほど大きくなっていた。
リビングにドンと構える水槽を眺め、妹は変わらず愛情を注いでいたが、
私は"大きな赤い魚"になった金魚のことが少し怖くなっていた。
そんなある夏の日、家族が寝静まった夜、急に目が覚めた。
喉が渇いたような気がして、キッチンに向かう。
電気をつけて、麦茶を注いでいたその時。
水槽の方から「バン!」という衝撃音と、「ビチビチ!!」と不穏な音・・・
明らかに魚っぽい音。夢かな?と思ったが、そんなわけない。
ビチビチ!!と跳ねる音は鳴り止まない。
恐る恐る見に行ってみると、どうやら跳ねた金魚が水槽の蓋に体当たりし、
そのまま外に飛び出していた。
水に戻さなければ!という気持ちと、金魚とは思えない大きさの魚に
怯える気持ちでパニック!
でも、やはり姉として、妹が悲しむ顔は見たくない・・・!!
勇気を振り絞り、雑巾を持ってくる。
手づかみは無理なので、雑巾で包んで水槽に戻し、なんとか金魚を救った。
相変わらず、水槽の中を狭そうに、荒々しく泳いでいた。
私は、金魚と妹の笑顔を守ったのだ・・・が、
さっきコップに注いだ麦茶の味がしないほど、ドキドキが止まらなかった。
私が電気をつけたから、驚いて飛び出したのだろうか。
翌朝家族に話したら、「本当に?」という顔をされつつも
水槽の上に重石を置くことになった。
重石のおかげで、その後水槽を飛び出す事件は起こらなかった。
きっとみんな、あれは私の夢だろうと思っている気がする。
いや、違う。あの時の音、衝撃、金魚の感触。
うん、金魚の感触。
ずっと忘れられないと思う。