ねごと日記

ラジオときどきPodcast

金魚のはなし

小学生の頃、妹が小さな金魚を飼っていた。

どこかの祭りですくってきて、そのまま帰ってきたというよくある話。

水槽でヒラヒラ泳ぐ姿が可愛かったものの、

1年ほどかけて巨大化。

最初の姿を忘れてしまうほど大きくなっていた。

リビングにドンと構える水槽を眺め、妹は変わらず愛情を注いでいたが、

私は"大きな赤い魚"になった金魚のことが少し怖くなっていた。

 

そんなある夏の日、家族が寝静まった夜、急に目が覚めた。

喉が渇いたような気がして、キッチンに向かう。

電気をつけて、麦茶を注いでいたその時。

水槽の方から「バン!」という衝撃音と、「ビチビチ!!」と不穏な音・・・

明らかに魚っぽい音。夢かな?と思ったが、そんなわけない。

ビチビチ!!と跳ねる音は鳴り止まない。

恐る恐る見に行ってみると、どうやら跳ねた金魚が水槽の蓋に体当たりし、

そのまま外に飛び出していた。

水に戻さなければ!という気持ちと、金魚とは思えない大きさの魚に

怯える気持ちでパニック!

でも、やはり姉として、妹が悲しむ顔は見たくない・・・!!

勇気を振り絞り、雑巾を持ってくる。

手づかみは無理なので、雑巾で包んで水槽に戻し、なんとか金魚を救った。

相変わらず、水槽の中を狭そうに、荒々しく泳いでいた。

私は、金魚と妹の笑顔を守ったのだ・・・が、

さっきコップに注いだ麦茶の味がしないほど、ドキドキが止まらなかった。

私が電気をつけたから、驚いて飛び出したのだろうか。

翌朝家族に話したら、「本当に?」という顔をされつつも

水槽の上に重石を置くことになった。

重石のおかげで、その後水槽を飛び出す事件は起こらなかった。

きっとみんな、あれは私の夢だろうと思っている気がする。

いや、違う。あの時の音、衝撃、金魚の感触。

うん、金魚の感触。

ずっと忘れられないと思う。