ねごと日記

ラジオときどきPodcast

ラジオ遍歴 第2

私の住む街は、電波が届かない。

そんな現実と向き合いながらも、なんとか抗っていたとき、ふいにチャンスが訪れた。

九州に住むいとこの家に、ひとりで泊まりに行くことになったのだ。

荷造りをして、パンパンになったリュックサック。

私は出発前日まで迷いに迷い、意を決して、

リュックの底に相棒のラジカセを隠すように入れた。

なんとなく、親やいとこにばれたら恥ずかしいような気がして。

でも私は知っていた。

いとこの住む街は、オールナイトニッポンが聞けるのだ。

そして泊まる日は、水曜日。

小学生ながら、これは運命だと思った。

飛行機に乗り、いとこたちと遊び、

用意してもらった布団に入った。

真夏の夜、外はアマガエルの大合唱。

冷房が効いていたためか、布団の中はひんやりしていた。

こっそりと、持ち込んだ相棒を取り出す。

チューニングする。

スッとクリアに聞こえるポルノグラフィティの声。

それだけのことが素晴らしくて、うれしくて。

この夜のことは今でも鮮明に覚えている。

 

興奮でほとんど眠れずに迎えた翌朝、

叔母さんが朝ごはんの用意のためキッチンに立っていた。

「おはよう、よく眠れた?」

「はい…おはようございます」

ふと、キッチンから音楽が流れていることに気がついた。

叔母さんは、FMラジオをかけていた。

子供ながらに、「おしゃれだなあ。大人になっても、

私もラジオを聴きたいな」と、はっきりと思った。